タンッ
彼の全てを奪うそれは、残酷なほどに軽い音を立てて吐き出された。
瞬間、何が起きたのかを理解できなかった。
ショートしたような脳が受け入れたのは、目の前で崩れる身体が共に戦ってきた友人であるということ。
その胸から噴出した、鮮やかなまでの、赤。
そして、ただ一人、離れた場所に座っていたはずの後輩の、絶叫。
「ッ――――――ッッ!!!!!」
自分たちに比べて随分と小柄な身体が、文字通り飛ぶように走って来た。
銃口を突きつけられていることにも気付いていないのか、赤く濡れた身体を腕に擁き、殆ど泣きそうな声で《彼》の名を呼ぶ。
場違いなほどに穏やかな声が、そんな彼を咎めるように制止した。
動かない身体に呼びかけていた声が、ぴたりと止まる。
ゆっくりと上げられたその顔に、涙は無い。
ただ、どこまでも感情の窺えない濁った瞳に、背筋が凍った。
「……てやる…………」
ぽつりと呟かれた言葉は、静かな室内に嫌に響いた。
止めろ。そう声をかける暇すらも無い。
激情のままに動いた彼を、止めることも出来なかった。