震える身体を、止めることなんて出来なかった。
目の前に広がる光景が、まるで現実味も無く見開いた目から飛び込んでくる。
泣き叫ぶ少年、倒れ逝く人、
そして、床一面に広がる赤、赤、赤 …
あ……
小さく口から出たと思った言葉は、ひゅうっ、と咽を震わせるだけ。
全身を真っ赤に染めて、床に伏す彼を抱き留めた少年だけが、まるで凍りついた時間の中で刻を刻んでいるかのような錯覚。
わんわんと、耳の奥で音叉をかき鳴らされているような感覚がして、思わず耳を塞いだ。
恐ろしく静かな室内に、少年の慟哭だけがやけに響く。
パキン、…
心のどこかで、大切な何かが砕ける音がした―――――