昔から、ボクは大人から「怖いもの知らず」ってレッテルを貼られてた。
例えば、授業終了の15分前にようやく鉛筆を握るテストだったり。
何ゲームも落としてから反撃を始めるテニスだったり。
そんな風にわざとプレッシャーをかけるのが、周りの人の目には不思議に映ったんだろうけど。
けど、プレッシャーがかかったテストも、テニスも、ボクにとって怖いことなんかじゃなかった。
まるで崖っぷちに立っているみたいなスリルを、楽しんでただけ。
だから、別にボクは「怖いもの知らず」なんてものじゃなかった。
当たり前だよね?
怖いものが無い子供なんて、いるわけないもん。
いつも無表情のダビデだって、バネさんが本気で怒ると真っ青になってるし。
あんなに男らしいバネさんだって、実は笑顔のサエさんに勝てた試しがないし。
そんなサエさんですら、「不二の笑顔には負けるなぁ」…って苦笑してたし。
そんな風に言ってたら、一度だけ、「じゃあ剣太郎の怖いものは何?」って聞かれたことがあった。
それまで、ボクは「怖い」って思ったことがなかった。
だけど、きっと、多分、
おじいちゃん、おばあちゃん、父さんに母さん、兄さんたち、オジイ、バネさんやサエさん、樹っちゃんに聡さん、亮ちゃん、ダビデ……
ボクの傍にいてくれる、ボクの大切な人たち。
きっと、皆がいなくなったら、それはすごく「怖い」んだろうな、って。
そう、思ったんだ。